生命保険の受取金は、基本的に特別受益にはなりません。生命保険の受取金は、保険金受取人の固有の権利であると考えられているためです。判例も同様の考え方を採用しています(最判平16.10.2)。生命保険の死亡保険金があっても、遺産分割の対象にもなりません。 |
ただ、生命保険金の金額が大きい場合には、生命保険金を遺産分割の対象にしないと、他の相続人との間で不公平になることがあります。実際に、生命保険金は高額になることも多く、特定の相続人のみが受けとると、トラブルの原因にもなりやすいです。高額な生命保険金がある一方で、他には遺産がほとんどないという事例もあります。
そこで、生命保険の死亡保険金についても、それが著しく高額で、他の相続人が受けとる遺産の額が少額で、生命保険金を遺産分割の対象にしないと他の相続人との間で著しい不公平が発生する場合には、生命保険金を特別受益と評価して持ち戻し計算を行うべきと考えられています。生命保険金を特別受益とすべきかどうかの判断を行うときには、被相続人と保険金受取人との同居の有無や被相続人の介護をしていたかどうか、他の共同相続人と被相続人との関係やそれぞれの相続人の生活実態などの事情も考慮します。
このように、生命保険金の受取金は、特別受益になる場合とならない場合があります。