特別受益を受けた相続人がいる場合に遺産分割を行うためには、特別受益の持ち戻し計算をしなければなりません。そのためには、特別受益の対象財産を評価する必要があります。このとき、特別受益の対象資産の評価方法には、通常の遺産相続の対象財産と評価方法が異なる点があるので、注意が必要です。特別受益の評価基準時は、通常の相続財産の評価基準時と異なるからです。 |
評価基準時というのは、いつの時点の価格を基準とすべきかということです。現金などの場合には、時間が経過したからと言って価格変動が起こりませんが、不動産や株式などの場合、相続開始時と遺産分割時とで時価が変わることも普通にあります。そこで、いつの時点における時価を使って計算すべきかが重要な問題になります。
特別受益の対象資産の評価については、相続開始時の評価額を基準にします。たとえば、不動産の生前贈与が特別受益になる場合で、被相続人の死亡時の時価は3000万円、遺産分割時の時価は3500万円になっている場合、その不動産の評価は、被相続人が死亡した時点における時価である3000万円とします。
これに対し、通常の相続財産の評価基準時は、遺産分割時です。たとえば先ほどの不動産を遺産分割の対象にする場合には、評価額は遺産分割時の時価である3500万円となります。
このように、特別受益がある場合、遺産分割の対象資産と特別受益の対象資産とでは、評価基準時が変わってくるので、注意しましょう。