いいえ、年俸制であっても残業代が発生する可能性があります。年俸額を所定労働時間で割算して1時間あたりの基礎賃金を算出し、残業代を計算します。 |
・年俸制と残業代
年俸制とは、1年ごとの給与額をまとめて定める給与形態です。
一般的には給料は月給制となっており、毎月の基本給や付加給、手当などを取り決めますが、年俸制の場合にはこれを年単位で決定します。
ときどき「年俸制の場合、残業分もまとめて給料を払っているから、個別の残業代は発生しない」と思われていることがありますが、これは間違いです。
単に給料を年単位で計算しているだけなので、時間外労働が行われたらその分の割増し賃金が発生します。
・年俸制の残業代計算方法
年俸制の場合、年俸の金額を年間の所定労働時間で割り、1時間当たりの基礎収入を算定しますが、計算時に間違いが起こりやすいので注意が必要です。
たとえば年俸を定めるとき、1か月の給与が50万円、年2回の賞与があるとして年俸700万円などとするケースがあります。このようなとき、経営者側は毎月の50万円を基準として(ボーナス分を差し引いて)給与総額を600万円として1時間あたりの基礎収入を算定しようとすることがあります。
しかし法的な考え方は異なっており、裁判例では、ボーナスを含めた年俸全額である700万円を基準に計算していることが多いです。
・年俸制で残業代が発生しないケース
年俸制の場合でも、裁量労働制が適用されるケースや管理監督者に該当するケース、相手が業務委託契約を締結している個人事業者である場合などには残業代を支払う必要がありません。
年俸制の労働者から残業代を請求されて対応にお困りの場合、弁護士がアドバイスいたしますので、お気軽にご相談下さい。